ロボット映画紹介『月に囚われた男』

著者 : HaLu

月に囚われた男 BD■月の裏側、3年間のひとりぼっちのミッション
地球に不可欠なエネルギーを採掘するため、たったひとりで月へと旅立っていった宇宙飛行士のサムは、世界最大の燃料清算会社ルナ産業と3年間という契約を結び、その任務に取り組みます。サムの任務先は月面基地のサラングを拠点としています。相棒は、人工知能を搭載したロボット・ガーディだけです。唯一の楽しみは、TV電話で、妻のテスと会話をすることでした。
しかし任務の途中で、その唯一の楽しみの地球との交信設備が故障してしまい、計り知れない孤独感に襲われて過ごすことになります。毎日が孤独との闘い、格闘なのです。
そんな苦痛の日々もあと2週間で終了となろうとしていたとき、作業中に事故を起こしてしまいます。基地内の診察室で目を覚ましたサムですが、自分がどうやってここに戻って来ているのか記憶がありません。そして、驚いたことに、目の前には自分と瓜二つの男、もうひとりのサムがいるのです。果たしてこの男は誰なのか、自分は夢の中にいるのか、幻覚を見ているのだろうか、現実は何なのか、この違和感は何なのか、一体何が起こっているのか分からなくなっていくのです。

■登場人物はロボットと宇宙飛行士のみ
この映画、舞台は月の裏側にある採掘基地。そして、登場人物は人工知能搭載のロボットのガーディと宇宙飛行士のサムだけ。サムは途中から2人でてくることになりますが、とにかく、殺風景な舞台で淡々とお話が進んでいきます。周りに余計なモノが出てこないだけに、妙な緊張感を覚えます。
さて、その緊張感は、サムが地球生還まであと2週間となったある日、基地の外で大事故に巻き込まれたところから、どんどん高まりはじめます。基地の外で事故を起こしたはずなのに、目が覚めると基地内に居るのです。ここに居るのは、自分とガーディーだけのはず。どうやって自分がここに戻って来たのかも分かりません。目の前に自分と瓜二つの人間が現れたら・・・。3年もの間、相棒はロボット・ガーディーだけ、自分以外の人間は存在しない環境にいたら、幻覚くらい見ても不思議じゃないかと思ってしまうところですよね。あと2週間で地球に帰れる、そんな時期に起きてしまった事故について、何か違和感を感じているサムは、事故現場を調査しようとします。しかし、なぜか、ガーディーはそれを阻止します。気になって仕方がないサムは、ガーディーの制止を振り切り、事故現場に向かうと、そこには、大けがをしている自分の姿を見つけます。
目の前に居るケガを負った自分は誰なのか?そして、それを発見している自分は誰なのか?どれが本物のサムなのか?観ているほうはかなり困惑しますが、なぜか、サム(たち)は、どこか冷静に見えます。

■クローンのサムとロボット・ガーディーの任務とは
さて。2人のサムが出て来るわけですが、実はこの2人、クローンなんです。カラダは誰か(本物のサム)のコピーで、記憶と思っていたものも、作られたもの、埋め込まれたものだったのです。自分は誰かのコピーだということに気づいたサムは、自分が自分でないという、自分が確立していた自分というモノがないということを知り、苦悩するのですが、しかし、心では、3年の任務が終わると、地球に帰れるということを信じています。
そんなサムに向かって、人工知能搭載のロボット・ガーディは、プログラム通りに仕事をしようと言います。ガーディに向かって自分はプログラムなんかされていないと言うシーンはかなり切なく心が痛みます。
ガーディーは、すべてを知っています。サムがここに来させられた理由も、どんな任務を全うすべきかも。ですが、今までこの任務にやってきた人たちの行く末を見て来たからなのか、サムを助けることに手を貸し出すのです。感情もプログラムされている人工知能だったようです。捨ててもいい命なんてない、助けられる命は助けたい、そういった感情がガーディーにも芽生えていたのです。
コミュニケーションロボットや、感情を持ったロボットなどが次々と世の中に出て来ている、今日この頃。感情を持つロボットが、こういった人間的判断、理性を持つことがあるかもしれない、と希望を持ってしまう、そんな印象的なシーンでした。
ただ、どんなに2人のサムが協力して地球への生還を試みようとも、2人ともオリジナルではないクローンであるということを考えると、その生還には果たして意味があるのだろうかと深く考えさせられます。しかし、クローンは同じオリジナルからのクローンであるのであれば、どちらかが犠牲になったとしても、すべては「自分」のためにしていることになるというのだから、犠牲という表現はちょっと違うのかなという気もする、そんな不思議なお話です。

月に囚われた男
発売中 ¥2,381(税抜)
発売・販売元:(株)ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント

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